「給料も大事。でも、それだけで何年も続けられる気はしない」
「成長したい。でも、成長の名目でずっと消耗するのは違う気がする」
20代や30代前半で仕事を選ぶ時、たぶん多くの人は「やりたいことだけ」で決めているわけではありません。生活できる給料は必要です。将来につながるスキルも欲しいです。人間関係や働き方で心身を削り続けるのも避けたい。そしてできれば、自分の価値観から大きく外れない仕事を選びたい。
海外の大規模調査を見ても、この感覚はかなり自然です。Z世代・ミレニアル世代は、仕事を軽く見ているわけでも、理想だけを追っているわけでもありません。むしろ、生活を守れるか、成長できるか、心身が続くか、自分の価値観に反しないかまで、かなり広い範囲を見て判断しています。
Z世代・ミレニアル世代の仕事選びは、安定、成長、ウェルビーイング、意味の4つで見ると理解しやすいです。生活が成り立ち、スキルが増え、無理なく続けられ、自分の価値観から大きく外れない仕事を探している。これは迷いというより、仕事が人生に与える影響を細かく見ているからこその判断です。
この記事では、Deloitte Globalの2026年・2025年のGen Z and Millennial Survey、Gallupの2025年リモートワーク調査、PwCの2025年Global Workforce Hopes and Fears Surveyをもとに、Z世代・ミレニアル世代が何を基準に仕事を選んでいるのかを整理します。
なお、ここでいうZ世代・ミレニアル世代は、調査ごとに定義が少し異なります。Deloitte 2026調査では、Z世代は1995年1月から2007年12月生まれ、ミレニアル世代は1983年1月から1994年12月生まれです。日本の世代区分と完全に一致するものではないため、この記事では「海外調査から見た若年層・中堅若手層の傾向」として読んでください。
仕事選びの基準は「やりがい」だけではない
Z世代の仕事観を語る時、「やりがい」や「社会的意義」ばかりが強調されることがあります。もちろん、意味のある仕事を求める傾向はあります。ただ、データを見る限り、それだけで仕事を選んでいるわけではありません。むしろ、生活の安定が土台にあり、その上に成長や意味を重ねていると見るほうが自然です。
Deloitteの2026 Gen Z and Millennial Surveyは、22,595人を対象にした44カ国調査です。ここでは、Z世代・ミレニアル世代が「自分たちのペースで前進する」世代として描かれています。速い昇進や伝統的な成功だけを追うのではなく、安定、スキル、ウェルビーイングを重視している、という見方です。
海外調査の結果を、まいんでぃあが仕事選びの判断軸として整理したものです。
この仕事は、自分の考え方や信じたいものと大きくズレていないか。
メンタル、体力、生活リズムを壊さず、長く続けられるか。
この会社にいることで、将来使える能力や経験が増えるか。
給料、住まい、物価、将来不安を含めて、生活が組み立てられるか。
生活の安定は、仕事選びの土台になっている
まず外せないのが、安定です。これは「保守的になった」というより、生活コストや将来不安が仕事選びに直撃している、という話です。
Deloitte 2026調査では、生活費の高さが5年連続で最大の懸念として挙げられています。Z世代では38%、ミレニアル世代では42%が、生活費を最も大きな心配事として挙げています。また、経済状況を理由に住宅購入、結婚、出産、進学などの大きな人生選択を遅らせている人は、Z世代で55%、ミレニアル世代で52%でした。
さらに、住まいの入手しやすさや家賃・住宅価格が、キャリア判断や働ける場所に直接影響していると答えた人は、Z世代で69%、ミレニアル世代で64%です。つまり、「どんな仕事がしたいか」だけでなく、「その仕事でどこに住めるのか」「その給料で生活が成り立つのか」が、かなり現実的な基準になっています。
Deloitte 2026調査から、経済的な不安がキャリア判断に影響している数字を抜き出しました。
Z世代38%、ミレニアル世代42%。生活コストは仕事選びの前提条件になっています。
住宅、結婚、出産、進学などを遅らせている人が過半数にのぼります。
働く場所やキャリア選択が、住宅の入手しやすさに左右されています。
ここから言えるのは、Z世代・ミレニアル世代が「安定を軽視している」のではなく、むしろかなり重視しているということです。ただし、昔ながらの「大企業に入れば安心」「出世すれば安心」という安定ではありません。生活費、住まい、スキル、働き方まで含めた、もっと実感に近い安定を見ています。派手な言葉ではありませんが、かなり現実を見た仕事選びです。
出世したくないのではなく、無理な出世をしたくない
次に誤解されやすいのが、キャリアアップへの意欲です。Deloitte 2026調査では、Z世代の25%、ミレニアル世代の21%だけが、急速な昇進を伴う速いキャリア進行を好むとされています。また、2025年・2026年のDeloitte調査では、リーダー職に就くことを最優先のキャリア目標とする人は、Z世代・ミレニアル世代ともに6%にとどまっています。
この数字だけを見ると、「若い世代は出世したくない」と見えるかもしれません。でも、そう単純ではありません。Deloitte 2026調査では、多くの人が段階的な成長や横移動を通じて経験を積むことを好む、と説明されています。つまり、成長したくないのではなく、消耗するだけの昇進や、準備がないまま責任だけが増えるキャリアを避けているのです。
20代・30代は、責任から逃げたいのではなく、責任を引き受ける条件を見ています。裁量があるか。支援があるか。働きすぎで心身が壊れないか。リーダーになった先に、自分の生活や価値観が保てるか。そこまで考えられているからこそ、昇進を勢いだけで選ばないのだと考えられます。
これは、日本の若手社員や30代前後のミレニアル世代にもかなり当てはまる感覚だと思います。管理職になれば給料は上がるかもしれない。でも、プレイヤー業務も残り、部下のケアも増え、責任だけ重くなり、自由時間がなくなるなら、それは本当に成功なのか。そう考える人が増えているのは、かなり合理的な判断です。自分の将来像を、肩書きだけで決めない冷静さがあるとも言えます。
成長機会とスキルは、かなり重視されている
「出世したくない」と「成長したくない」は違います。むしろ、Deloitte 2025調査では、Z世代・ミレニアル世代が学習とスキル開発をかなり重視していることが示されています。
Z世代の70%、ミレニアル世代の59%は、週1回以上、キャリアを進めるためのスキル開発をしていると回答しています。また、Z世代の67%は、勤務時間外にもスキル開発に取り組んでいるとされています。さらに、AI時代に重要な能力として、AIスキル以上にソフトスキルが重視されており、Z世代の86%、ミレニアル世代の85%が、コミュニケーション、リーダーシップ、共感、ネットワーキングなどのソフトスキルをキャリア進行に必要だと考えています。
Deloitte 2025調査から、学習とスキルに関する数字を整理しました。
つまり、Z世代・ミレニアル世代は「会社が用意した階段を上ること」より、「自分の市場価値や選択肢を増やすこと」を重視していると考えられます。肩書きよりスキル。年功より経験。終身雇用より、どこでも使える能力。これは仕事に消極的なのではなく、自分のキャリアを会社任せにしない姿勢に近いです。
意味のある仕事は大事。でも「仕事だけが人生の意味」ではない
Deloitte 2025調査では、Z世代の89%、ミレニアル世代の92%が、目的意識や意味のある仕事を、仕事満足度やウェルビーイングにとって重要だと考えています。また、Z世代の44%、ミレニアル世代の45%が、目的を感じられない仕事を辞めた経験があるとされています。
この数字を見ると、たしかに「意味」はかなり重要です。ただし、注意したいのは、ここでいう意味が一つではないことです。社会に良い影響を与えたい人もいます。自分や家族の生活を守ることが意味になる人もいます。仕事で得たスキルや収入を使って、仕事以外の場所で価値を作りたい人もいます。
つまり、Z世代・ミレニアル世代は「社会貢献できる仕事以外は嫌だ」と言っているわけではありません。むしろ、「この仕事を続けることで、自分の人生が納得できる方向に進んでいるか」を見ています。お金、成長、健康、価値観。この4つのバランスが崩れると、仕事への納得感が落ちやすいのです。
- 意味を求める:社会貢献だけでなく、生活や成長に納得したい。
- 出世に慎重:責任を避けたいのではなく、続けられる形かを見ている。
- 会社を冷静に見る:長く働ける条件や、そこで得られる経験を見ている。
- 柔軟な働き方を求める:学びやつながりも含めて、自分が力を出しやすい働き方を選んでいる。
- 転職も選択肢に入れる:合わない条件を放置せず、自分が力を出せる環境を探している。
データから見えるのは、「条件を見ずに我慢すること」を成功と考えにくくなっている世代です。働く意味は欲しい。でも、意味だけで生活はできない。安定は欲しい。でも、安定だけで自分を失いたくない。成長はしたい。でも、成長の名目で壊れたくない。ここまで複数の条件を同時に見ているからこそ、20代・30代の仕事選びは一見わかりにくく、でも実はかなり筋が通っています。
リモートワークより、学習とつながりを含むハイブリッドを求めている
Z世代は完全リモートを最も好む、と思われることがあります。でも、Gallupの2025年調査を見ると、少し違います。リモート可能な米国労働者を対象にした調査では、Z世代のうち完全リモートを希望する人は23%で、71%はハイブリッドを希望しています。ミレニアル世代は完全リモート35%、ハイブリッド60%でした。
つまり、Z世代は柔軟性を求めながらも、つながりや学習機会も大切にしていると見るほうが自然です。特にキャリア初期は、雑談、観察、質問、偶然のフィードバックから学ぶことも多いです。働く場所だけでなく、どう学ぶかまで見ている点は、かなり理にかなっています。
Gallup 2025調査の「リモート可能な労働者の希望勤務形態」を整理しました。
ミレニアル世代は、Z世代よりもリモートワークへの愛着が強い傾向があります。Gallup調査では、リモート選択肢が一部または完全になくなった場合に、別の仕事を探す可能性が非常に高いと答えたミレニアル世代は41%でした。これは他世代より高い数字です。育児、家事、通勤、集中環境など、生活との両立がより強く関係していると考えられます。
AI時代の仕事選びは「置いていかれない環境」も条件になる
もう一つ、これから重要になるのがAIです。Deloitte 2026調査では、Z世代・ミレニアル世代の約4分の3が、日々の仕事でAIを何らかの形で使っているとされています。さらに、AIを学習機会の発見に使う人は両世代とも79%、キャリア相談に使う人はZ世代72%、ミレニアル世代69%、仕事関連ストレスへの対処に使う人もZ世代67%、ミレニアル世代65%でした。
これはかなり面白い変化です。AIは単なる業務効率化ツールではなく、Z世代・ミレニアル世代にとって「キャリアを考える相棒」のような役割も持ち始めています。何を学ぶべきか。どんな仕事に向いているか。今のストレスをどう整理するか。そうした問いに対して、組織の研修や上司だけでなく、AIも使い始めているのです。新しい道具を、自分の判断材料を増やすために使っているとも言えます。
一方で、Deloitte 2026調査では、Z世代の68%、ミレニアル世代の66%が自分自身はAIツールを使えると感じているのに対し、シニアリーダーがAIを使えると信頼している人は60%にとどまっています。ここには、若い世代の適応スピードと、組織側の準備の差があります。
- AIを使うことを禁止するのではなく、どう使うかを一緒に設計している。
- 新しいツールを試す余地があり、学習が業務の一部として扱われている。
- 若手だけに自助努力を求めず、上司や組織も学び直している。
- AIで置き換えられる作業だけでなく、人間の判断、対話、編集力も伸ばせる。
結局、Z世代・ミレニアル世代は何を基準に仕事を選ぶのか
ここまでのデータを、仕事選びの基準としてまとめると、次のようになります。
| 基準 | 見ていること | 求人・職場で確認したいこと |
|---|---|---|
| 生活の安定 | 給料、住まい、物価、将来不安に耐えられるか。 | 年収、昇給、勤務地、住宅補助、働く場所の柔軟性。 |
| 成長機会 | スキル、経験、人脈、市場価値が増えるか。 | 研修、OJT、メンター、裁量、異動や挑戦の機会。 |
| ウェルビーイング | 心身が壊れず、長く続けられるか。 | 労働時間、心理的安全性、休みやすさ、上司の支援。 |
| 意味・価値観 | 自分の考え方と大きくズレていないか。 | 事業内容、顧客への価値、倫理観、会社の意思決定。 |
| 柔軟性 | 自分の生活や学び方に合わせられるか。 | ハイブリッド勤務、勤務時間、学習時間、チームの出社設計。 |
| AI時代への適応 | 新しい技術を学び、仕事に取り入れられるか。 | AI利用方針、ツール環境、上司の理解、リスキリング支援。 |
この表を見ると、20代・30代の仕事選びは、かなり複雑なリスク管理です。生活不安がある中で、将来使えるスキルを増やしたい。AIで仕事が変わる中で、自分の価値を失いたくない。メンタルを壊したくない。でも、仕事に意味も欲しい。こうした条件を同時に満たそうとしているから、単純な「給料が高い」「有名企業」「出世できる」だけでは動きにくくなっています。見方を変えると、自分の人生を雑に扱わず、長く続けられる選択肢を探しているということです。
まいんでぃあ式に見ると、仕事選びの優先順位は人によって違う
ただし、同じZ世代・ミレニアル世代でも、全員が同じ基準で仕事を選ぶわけではありません。ここは、世代論だけで語ると危険です。実際には、性格特性によって「何を重く見るか」はかなり変わります。
- 開放性が高い人:新しい挑戦、学習機会、裁量、意味を重視しやすい。
- 誠実性が高い人:成長ルート、評価基準、安定、計画性を重視しやすい。
- 外向性が高い人:人との接点、チームの活気、承認や影響力を重視しやすい。
- 協調性が高い人:人間関係、心理的安全性、価値観の一致を重視しやすい。
- 神経症傾向が高い人:不確実性の少なさ、支援体制、無理のない働き方を重視しやすい。
世代としては、安定、成長、ウェルビーイング、意味を重視する傾向があります。でも、その中で自分が何を最優先にするかは、性格によって違います。だから「Z世代だからこう」「ミレニアル世代だからこう」で終わらせず、自分の反応パターンを見ることが大切です。
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よくある質問
Z世代は何を基準に仕事を選びますか?
海外調査を見ると、Z世代は給料や安定だけでなく、スキルが身につくこと、無理なく続けられる働き方、価値観や意味との一致を重視しています。特にDeloitte 2026調査では、安定、スキル、ウェルビーイングを優先する傾向が示されています。
ミレニアル世代は仕事選びで何を重視しますか?
ミレニアル世代もZ世代と同じく、生活を支える安定、成長機会、働きやすさ、仕事の意味を重視します。Gallup 2025調査では、ミレニアル世代はリモートワークへの愛着が特に強く、柔軟な働き方が転職意向にも影響しやすいことが示されています。
Z世代は出世したくない世代ですか?
出世したくないというより、急な昇進や重すぎる責任を無条件に望んでいない、と見るほうが正確です。Deloitte 2026調査では、管理職やリーダーへの関心はある一方、急速な昇進を望む人は少なく、持続可能な成長を重視する傾向が見られます。
Z世代はリモートワークを一番好みますか?
必ずしも完全リモートを最も好むわけではありません。Gallup 2025調査では、リモート可能なZ世代のうち完全リモートを希望する人は23%で、71%はハイブリッドを希望しています。つながりや学習機会も重視していると考えられます。
20代・30代は仕事に期待していないのでしょうか?
期待していないというより、仕事に求める条件を現実的に見ています。PwC UKの2025年調査では、Z世代は仕事への期待や楽観も高い一方、転職や昇給交渉などの行動も起こしやすいとされています。期待が低いのではなく、条件が合わない場所に長く留まりにくいと考えるほうが自然です。
まとめ:20代・30代の仕事選びは、理想論ではなく現実的なバランス感覚
Z世代・ミレニアル世代の仕事選びは、やりがいだけでも、給料だけでもありません。海外データから見えるのは、生活の安定、スキルの成長、心身の持続可能性、仕事の意味を同時に見ている姿です。
生活費や住宅の不安があるから、給料や勤務地は重要です。AIで仕事が変わるから、スキルが身につく環境も重要です。働きすぎで壊れたくないから、ウェルビーイングも重要です。そして、人生の多くの時間を仕事に使うから、自分の価値観と大きくズレていないことも重要です。
仕事を選ぶ基準が増えたのは、仕事への期待が下がったからではありません。仕事が人生に与える影響を、より現実的に見ているからです。生活を守りながら、成長し、心身を保ち、自分の価値観とも大きくズレない場所を探す。そこまで考えられているからこそ、仕事選びは慎重になります。そのバランス感覚こそが、Z世代・ミレニアル世代の仕事選びの本音に近いのだと思います。